『清張さんの道を歩く会』会報【No.7】改訂版

☆ 第3回「足立山麓の松本清張さんをしのぶ会」開催 ☆
 

 清張さん没後25年の平成29年8月4日、地元の足原市民センターで「第3回足立山麓の松本清張さんをしのぶ会」を開催することができました。一昨年から始めて3回目。清張さんの顕彰活動は、毎回、経験のない催しへの取り組みでしたが、多くのみなさまのご支援ご協力により、第1次3大目標である≪しのぶ会の継続開催≫≪公園の名称変更と除幕式≫≪清張文庫の設立≫のすべてを達成できました。心より御礼申し上げます。
 今回も、「しのぶ会」の様子は、マスコミ各社=NHK、朝日、読売、西日本、小倉タイムス=が報道してくださいました。記者、スタッフの皆様、有り難うございました。


☆ 「しのぶ会」進行と内容 ☆


 会に先立ち、松本清張記念館ご提供の、清張さんの有名な写真「清張 芥川賞の頃 黒原の自宅で」の前で、皆さんが恒例の献花、献本を行なった後、「歩く会」世話人の田中聖子さんの司会で「しのぶ会」が始まりました。参加人数は81名。5名の来賓の方に御祝辞を賜りました。要旨は以下の通りです。


★ 小倉北区役所総務企画課 企画広報担当課長 藤島研二郎様 ★

 足立山麓は、郷土ゆかりの偉人や先人達が足繁く訪れたところであり、数多くの 史跡が残る、小倉の歴史、文化を語る上で重要な地域です。このような意義ある地域に、「あしはら清張文庫」(足原市民センター内)と「きりがおか清張文庫」(霧丘中学校内、今秋開設で準備中)が開設され、清張作品がますます多くの方に親しまれることが期待されます。今後とも、地域の皆さんへ清張さんの足跡を語りつぐ活動を継続されることを期待しております。


★ 北九州市立 松本清張記念館 事務局長 在間順一様 ★

 前日、TV放映された清張原作の「黒革の手帳」を見ましたが、清張原作ドラマは毎回楽しみに見ており、清張文学の「弱者への眼差し、社会の理不尽さに対する思い」が時代を超えて普遍的に胸に伝わってきます。「歩く会」の地道な顕彰活動の取り組みで、清張文学が次世代へ引き継がれる場ができたと大変うれしく思っています。「あしはら清張文庫」が末永く地域の皆様に愛されるよう期待します。


北九州市立 霧丘中学校 校長 篠崎政義様 ★

 昨夜、私も清張原作のTVドラマ「黒革の手帳」を見ました。何度見ても面白いのは、原作がしっかりしているからだと思います。
 霧中の生徒には、文化、芸術を愛する生徒も多くいます。文化、芸術はむしろ家庭や地域で育んできた結果、子供たちの姿を通して表れているものと思います。
 国民的作家の松本清張さんは足立山麓の霧中校区ゆかりの作家です。このような地域に立地した霧丘中学校に、今秋、清張作品200冊規模の「きりがおか清張庫」を開設する予定です。生徒の読書意欲にもつながると考えます。子供たちが読書日本一を目指して清張文庫を大いに利用することを期待しています。

★ 足原校区 社会福祉協議会会長 金子輝子様 ★

 2年前、校区で史跡巡りをする計画が持ち上がりました。その際、史跡めぐりの第1回目として、よその校区の地域調べサークルの会が行っている「清張さんの歩いた道」の報告会と、清張さんが実際に歩いた道をたどる行事を、足原校区でもしてくださいと熱心に話を持ちかけられました。
 その結果、今日こういう姿になるとは、正直、思ってもみませんでした。「しのぶ会」、「公園名称変更除幕式」、「紙芝居上演」、そして「清張文庫」と、よくぞここまで成し遂げてくださいました。多くの方々の支えがあったからこそ実現したと思います。清張さんがいちばん喜んでいることでしょう。今後は、「あしはら清張文庫」を発展させてください。


 足原校区 まちづくり協議会会長 中村義雄様 ★

 「清張さんの道を歩く会」から「あしはら清張文庫」設立の報告があり、「まちづくり協議会」へ清張作品1,000冊の目録を贈呈後、以下のメッセージ。
 2年前、「歩く会」から相談があり実現させた「くろずみ清張公園に名称変更」と「清張文庫の開設」は、まさに<シビック・プライド>(自分の住んでいる町に愛着を持ち誇りに思うこと)そのものです。清張さんが住んだことを誇りに思って子や孫の代に繋ぐことは本当に素晴らしいことです。
 さらに、自分たちの住んでいる町を自分たちで良くしたいという<町おこしの事業>が、自治連合会などの役員からの発信でなく、地域の住民の皆様からの提案であるということが大変うれしく思います。清張さんを通して足原校区を、もっと素晴らしい町にして行きましょう。

☆ 「あしはら清張文庫」開設 ☆


 平成27年8月4日、第3回足立山麓の松本清張さんを「しのぶ会」が行われた足原市民センター内に「あしはら清張文庫」を新設しました。献本してくださった皆様のご協力に感謝いたします。有難うございました。献本数は1,200冊になりましたが、書架のスペースが限られており全部を配架できませんので、とりあえず年3回に分けて1回270冊を配架します。


 清張さんが書いた1,000冊近くの作品が、多くの国民を文学の世界へ誘い、心を癒し、人生を豊 かにしてくださったことでしょう。「あしはら清張文庫」は昭和の文豪「松本清張」さんの≪文学のふるさと≫で清張作品に気軽に接することができる場所です。みんなで清張作品を読んでみませんか。多くの人が清張作品を読まれることを期待します。
貸し出し対象の方は足原市民センターに来館された方全員。足原校区以外の方も貸し出しをします。1回の貸し出し数は4冊まで。貸し出し期間は2週間まで。貸出と回収業務は足原市民センターで行いますが、在庫管理などの業務は「足原校区まちづくり協議会」内に新設した「清張文庫実行委員会」が行います。

☆ 思い出を語る ☆

 

当時の「松本清張さん」や「ご家族」のことを知っている2人の方に当時の思い出を語っていただきました。


☆ 思い出を語る❶ 「足立中学校 校歌誕生の頃」 ☆


 村松 正さん(昭和13年生、昭和28年3月足立中学校卒業)は、第3回「しのぶ会」(平成29年8月開催)へ、<足立中学校 校歌誕生の頃の思い出>として、手記清張さんの歌が生まれたころ―母校懐想」を寄稿してくださいましたので、「清張さんの道を歩く会」の紙芝居班「くろずみ一座」の女性3名が、「しのぶ会」で朗読しました。

➡➡会報【No.7】(平成29年8月発行)では誌面の都合で一部割愛しましたが、今回、≪会報【No.7】特別掲載(1)≫として全文紹介します。


☆ 思い出を語る❷ 講演「清張さんと私」 ☆

 江副憲昭さん(昭和18年生)は、昭和19年、ご両親とお姉さんと4人(戦後、2人の弟が生まれ6人)で黒住町に住むようになり高校卒業まで同町にお住まいでした。昭和28年暮、清張さんは東京に転居したため、江副憲昭さんとの接点はわずか8年。それも10歳に満たない幼少の頃に親の世代の付き合いを子供として見ていたので、記憶に残る思い出は少ないと言いながらも、3年前までは「西南学院大学」経済学部教授として、33年年間、「ミクロ経済学」の研究と指導にあたられていましたので、 講義形式で、当時の<清張さんと家族の思い出><黒原(くろばる)営団【現・黒住町】の様子><清張作品の感想>などを、スライドを使いながら分かりやすく興味深く話していただきました。講演は大好評でした。

➡➡江副憲昭さんは、小倉高校<14期・昭和37年卒業生>です。小倉高校19期・同窓サイトに会報【No.7】≪改訂版≫を掲載するにあたり、第3回「しのぶ会」で<講演された原稿>に加筆していただき、≪会報【No.7】特別掲載(2)≫として、次回、掲載の予定です。


☆ 「あしはら清張文庫」開設に寄せて ☆


 最後は、東京在住の清張さんの長男「陽一さん」から、松本清張記念館を通じて寄せられたメッセージを、「歩く会」世話人の江副伸久さんが朗読して締めくくりました。要旨は、「❶あしはら清張文庫開設の祝辞❷父・松本清張を愛し、毎年、しのぶ会を開催していることへのお礼❸文庫が父と故郷の深い絆を知っていただく場となることは大変喜ばしいこと❹緑綬褒章受章の祝辞と私どもにとっても大変喜ばしいこと❺あしはら清張文庫開設によって、より広い世代の方が父・清張の作品に触れ、末永く読み継がれることを心から願っています」と、遠地にも拘らず、私共の活動を十分理解された大変うれしい内容のメッセージでした。


☆ しのぶ会に参加した感想  ☆

▼柿本静作さん(黒住町 82歳)=私は清張さんが住んでいた頃から黒住町に住んでいます。郷土の作家として尊敬しています。江副さんの講演は大変懐かしく聴きました。参加してよかったと思っています。当時、「黒原営団」内を黒人の脱走兵を探して走り回るMPのジープを目撃したので、「黒地の絵」は小説の中に引きずり込まれ緊迫感をもって読みました。
▼竹内愛加さん(黒原 80歳)=江副先生のお話は分かりやすく、清張さんをより身近に感じるようになりました。清張さんの本はよく読みました。一番良かったのは「砂の器」で、映画も見ました。家(旧居跡)も見学に行ったことがあり、記念館にも何回か行きました。「あしはら清張文庫」はもう利用しました。挿絵入りの「点と線」を読みました。
▼松下キクエさん(城野団地 75歳)=地元出身の芥川賞を受賞した先生なので、大事に受け継いでいくのが私たちの役目です。作品は「黒地の絵」が特に印象深く、黒人の脱走兵は怖かったですが、自分の住んでいる所が舞台になっていることに親しみを感じました。「あしはら清張文庫」は楽しみで、最初は地元が舞台になっている作品を読みます。
▼藤原昌弘さん(小倉北区今町 64歳)=軽い気持ちで参加したところ、本格的な内容にびっくりしました。証言は地元ならではの興味ある面白い話でした。文学マップにも大変興味を持ちましたので「3本の道」を歩いてみます。また、みんなで3本の道のウォーキング会や、映画会をして広げていけば、もっと面白いでしょう。


☆ 引き続き≪献本≫のお願い ☆

 

 8月4日までに皆様から寄せられた清張作品は1,200冊になりました。ご協力ありがとうございました。ちなみに献本数トップ3作品は、①「点と線」=18冊、②「砂の器」(上・下巻)=14部・28冊、③「或る『小倉日記』伝」=14冊。今後も、より充実した図書にするため献本活動は続けます。作品名にはこだわりませんので、清張作品の蔵書をお持ちの方は、是非、献本にご協力くださいますようお願い申し上げます。献本に関するご連絡、お問い合わせは下記へお願いします。

  1. 802-0056 北九州市小倉北区黒住町13-16 小松康希
    【電話】☎093-922-8618   📱090-3416-9055
    【PCメール】520914komatsukohki@jcom.zaq.ne.jp

★同会報は、<会報【No.7】>【2017年(平成29年)8月31日】に、一部加筆・修正しました。


改訂版【2020年(令和2年)10月1日 小松康希】